第13章 喜ばしき日
~夢主side~
聞いていた通り、威圧感のあるお父様。頭ごなしに杏寿郎を批判するその発言に、怒りに似たものが沸々と沸き上がる。
(杏寿郎がちゃらちゃらと遊び歩いてる…?違う、杏寿郎はそんな人じゃないのに)
「瑠火…お前はこいつの肩を持つのか?」
「敵、味方など、そう言う話しているのではありません。ただ、少し落ち着いて話を聞いてあげるべきではないのですか?頭ごなしに言っては、この子だって言いたいことも言えませんよ。ね?杏寿郎。」
「母上…!ありがとうございます!…父上、俺は…彼女と…生涯を共にしたいと思っています。」
杏寿郎の話を聞いても納得のいかない表情で、腕組みをしてご立腹そのものだ。
「ふんっ。結婚だと?未熟なお前に何が出来る!俺は反対だ。そちらの親御さんが許しても俺は認めん!だいたい、年頃の男女を一緒に住まわせるだと?彼女のご両親は少し軽率すぎるのではないか?全く近頃の親というものは、子に甘すぎる…」
その一言に今まで遠慮がちに話していた杏寿郎が初めて声を荒げた。お父様に歯向かうことなど、ほとんどなかったと言っていた杏寿郎の表情は、憤りを隠せないようだった。
「今のは聞き捨てなりません。彼女の家族を悪く言うことは父上でもあっても許せません!今の発言、取り消して頂きたい!」
「杏寿郎…!…いいの。」
私の家族を庇ってくれるのは嬉しいけど、今のお父様に何を言っても聞き入れて貰えない、そう思った。
けれど、杏寿郎のことをきちんと見てもいないのにあんなことを言うお父様に怒りを隠せない。
「確かにお父様の言う通り、私の両親は軽率かも知れません。ですが…なぜそんなに杏寿郎さんのことを頭ごなしに否定するんです?!無理?ちゃらちゃらして…?ちゃんと見てもないのにどうしてそんなことが言えるんですか!?」
私のなかで何かが音を立てて弾けた。
止めようと頭のどこか片隅では思っていても、それはもう止められなかった。
「杏寿郎さんはお父様が思っているような人ではありません!とても真っ直ぐで、真面目で、誰かの手助けをしようと手を差し伸べたり、職場でも社員さんから熱い信頼だって受けてます。それに…いつも私に特別な時間をくれます!そんな立派な息子さんなのに、どうしてそん、なっ……」
言いかけて、くらくらと目の前が暗闇に沈んでいく。