第13章 喜ばしき日
「おかえりなさい、杏寿郎。久しぶりですね。そちらが?」
「母上!お久しぶりです。今お付き合いをしている緋里陽奈子さんです」
出迎えてくれた母上に陽奈子を紹介すると、小さく微笑んでくれた。
「は、初めまして!緋里陽奈子です。」
「初めまして、杏寿郎がいつもお世話になっています。母の瑠火です。どうぞ上がってください。」
家に上がると、奥からパタパタと足音が近付いて、俺とそっくりな顔だが可愛らしい、我が弟が顔を覗かせた。
「兄上!!お久しぶりです!お元気でしたか?」
「おぉ、千寿郎!うむ、元気にしていたぞ!変わりはないか?」
「コホン。千寿郎、まずはお客様にご挨拶を」
久しぶりの再会に嬉しくてつい、陽奈子を紹介しそびれてしまう。
母上に指摘され、千寿郎が慌てて挨拶する。
「こ、これは失礼しました!初めまして、弟の千寿郎と申します。聞いていた通りとても可愛らしい方ですね、兄上!」
「か、かわっ…あ、こちらこそ初めまして、緋里陽奈子です」
少し順番を間違えてしまったが、千寿郎との挨拶を済ませると父上の元へと向かった。
「父上、お久しぶりです。なかなか顔を出せずに申し訳ありませんでした。こちら、今お付き合いをしている陽奈子さんです」
「緋里陽奈子です。本日はお忙しいなか、お時間を作って頂いてありがとうございます。」
「!…君が…初めまして、父の槇寿郎です。倅が世話になっているみたいだな。それで、久しぶりに帰ったと思ったら、これはどういうことだ?」
間髪入れずに問う父上に一瞬たじろいでしまう。
意を決して本題に入れば父上の表情が歪んだ。
「なんだと…?まだ社会に出て間もないお前がこの子と暮らす?何を言い出すかと思えば…長男でありながら、勝手なことばかり。どうせ周りの人間にも迷惑をかけているんだろう、ろくに顔を出さなかったのもちゃらちゃらと遊び歩いてばかりだったからだ!俺は認めんからな!」
「あなた、少しは杏寿郎の話も聞いてあげて下さい。」
断固として認めない父上にぐうの音も出ない俺を見かねてか、母上が味方してくれているようだった。