第13章 喜ばしき日
~煉獄side~
年末年始の休みが明けてから2週間経った。
出社するとミーティングの為それぞれが席に着く。
「それじゃ、ミーティング始めるぞー。まず俺の今の現場は…」
宇髄が中心となってミーティングを軽く済ませると、社長が不死川を前に来るよう呼び寄せた。
不死川が人前で話すなんてことは滅多にないから変な感じだ…
「結婚するわァ」
「「……は?」」
「チッ。二度も言わせんな、面倒くせぇ。結婚すんだよォ!」
唐突すぎる発言に周りが呆気に取られていると、不死川がさらに付け加える。
「なんつーか…その…父親になるわァ」
照れ臭さをかき消すよう、頭をガシガシと乱暴に掻いている。話の流れが早すぎて皆困惑して思考が追い付かない、もちろん俺もそのうちの一人なのだが…なんで?どうして?の質問責めに合う不死川を見て、つい最近のことを思い返して気付くことがある。
(陽奈子の実家に行く予定だったあの時、百瀬少女が体調が悪いと言っていたな…そうか、それはこういうことだったか!)
所謂『授かり婚』というものだ。
不死川が父親になる日が来るなんて想像も出来なかったが、友人の吉報を聞いてこんなに嬉しいことはない。
「それで玲愛ちゃん、最近休んでたのか。ったく、お前ら2人には驚かされてばっかだよ。よっ、パパ!」
「…っ!う、うるせーなァ…」
「父親になるならもう少し言葉遣いに気を付けるべきではないのか?」
そんな茶化しや忠告に「あ"ぁ!?」と睨んでくるが、いつもの威圧感はほとんどない。今の不死川は幸福感に満ち溢れた青年だ。
不死川のおめでたい話から、1ヶ月程経った。
陽奈子と相談して、フラム2号店オープンを待ってから俺の実家に行くこととなった。
その方が陽奈子も少しは気が楽になるだろうから…
そして今、実家の前に立っている。
住み慣れたはずの家は、なんだか他人の家のように感じる。
「うぅ…緊張してほとんど寝れなかったよ…」
「大丈夫か?俺も挨拶に行く前日は緊張でほとんど眠れなかった。きちんと話せば分かってもらえるだろう、大丈夫だ」
緊張している素振りを見せないよう、手を引いて中に入ると久しぶりの凛とした声音が俺達を迎えてくれた。