第12章 緊張と白銀
~煉獄side~
スキー場を後にして、燈志くんと郁茉少年と別れ、町へと繰り出す。
ガイド役を買って出た陽奈子にあちこち案内をしてもらって、たくさん美味しいものを食べたり、地酒の銘酒も紹介してもらい陽奈子の故郷を堪能した。
気付けばあっという間に夕方になっていた。
別々で来ていた胡蝶達と別れ、宇髄達と車走らせ帰路へついた。
先程、土産と言って地酒を買っていたはずだが、いつの間にかそれを後部座席で早々と開けて飲んでいた。土産ではないのか?と聞けば、自分用の土産だからいいと、満足気に高々と笑っていた。
道中、陽奈子の実家での話や今日のことを話していると後部座席が静かになった。助手席の陽奈子が振り替えると「2人とも寝ちゃった」と起こさないように2人の様子を伝えてくれる。
「慣れないことをして疲れたのだろう。それに酒もはいっていたしな」
「そうだね。着くまで寝かせておいてあげよっか……ねぇ杏寿郎、手…繋いでもいい?」
また可愛いことを言う。そんな陽奈子を凝視したいところだが、今は運転中だ。平静を装って「構わない」と左手を差し出せば嬉しそうな声音で「ありがとう」と一言呟いた。ぎゅっと握られた小さな手が暖かい…
暫くすると今度は陽奈子が静かになった。
ちらっと覗くと愛らしい寝顔でスヤスヤと気持ち良さそうに眠っていた。
(…久しぶりの故郷にはしゃぎすぎたのか……)
ちょうどよく前の車が停まったので、バックミラー越しに後ろの2人の様子を確認する。眠っていることを再確認すると、陽奈子の小さな唇にちゅ、と触れる程度のキスを落とす。
別にいけないことをしている訳ではないが、後ろの2人に見られてしまっては恥ずかしいからな…
「んぅ…」
今のキスで起きてしまったかと思っていると肩にトスと重みが掛かる。
寄り添うように眠る陽奈子が愛おしい。再びちらりと後部座席を確認すると、額に小さく口付けを落として幸せを噛み締めた。
この時、後ろの宇髄が起きていることも知らず…まさか一部始終を見られていたとは思いもしなかった。
後からそのことを突っ込まれ、少々恥ずかしい思いをしたのだった。