第12章 緊張と白銀
「陽奈子。みんなに格好いいところ、見せてきたら?」
「え?!む、無理だよ!!恥ずかしいし…」
「ねぇちゃんが行かないなら俺が行こっかな。兄貴に格好いいところ見せちゃお~」
挑発するように郁茉が言ってくる。私だって負ける気がしない、だからその挑発に乗ってやることにした。
(私だって、杏寿郎にかっこいいところ見せるんだから!)
少し場所を移動してパークへとやってきた。お兄ちゃんがパークがどんなものなのか説明してくれた。
「はいは~い、ここが「パーク」だよ!スノボ用語なんだけどね、ジャンプしたりスライドを楽しむためのアイテムのあるコースの総称ね! 今回はこのジャンプ台みたいなもの、キッカーって言うんだけど…これで陽奈子と郁茉に入って貰うね!」
一通り説明し終えると郁茉とスタートラインに立つ。先に郁茉、その次に私が滑る。
お兄ちゃんの合図と共に郁茉が勢いよくスタートをして、キッカーまで辿り着くとふわりと宙を舞って横に一回転の技を決めてみせた。
「「おぉー!!」」
郁茉の技にみんな歓声をあげた。その張本人は更に挑発するように片手を高々と挙げて、こちらを見ている。
(横かぁ…じゃ私は……)
再びお兄ちゃんの合図と共にスタートを切り、ふわりと郁茉より高く宙を舞い縦に一回転してみせた。
「「おおっっ!!!」」
更に大きな歓声と拍手が沸き起こる。気付けば他のギャラリーも増えていて、少し恥ずかしさはあったけど久しぶりの歓声に高揚感を感じた。
皆の元へと戻れば、杏寿郎が目を輝かせながら駆け寄ってきた。
「陽奈子、すごくかっこよかった!空飛ぶ鳥のようだったぞ!!あんなものを隠していたとは…また知らない君の一面が見れて嬉しい限りだ!!しかし…あれだけ格好いいところを見せられては男として格好がつかんな……」
「ふふっ。見直した?私も結構やるでしょ!練習すれば杏寿郎だってすぐに出来るよ。今日だってすぐ滑れてたし、飲み込みが早い方だと思うよ?」
その後、あっという間に滑れるようになった杏寿郎と一緒に滑って、スノーボードを楽しんだ。
また一つ杏寿郎との思い出が増えた。