第12章 緊張と白銀
~夢主side~
しのぶちゃん、蜜璃ちゃん、伊黒さんの三人に教えていると杏寿郎が少し滑れるようになってた。
(うわぁ…!さすが杏寿郎っ!やっぱり飲み込み早いなぁ…一緒に滑れるかな?)
なんて考えてたら…
「っきゃあああ!陽奈子ちゃんっっ」
「っわ!!!」
余所見してたせいで蜜璃ちゃんを受け止めきれず、そのまま倒れ込む。すぐにそばにいた伊黒さんが蜜璃ちゃんの元へ来ると手を引いて起こしてあげていた。
(…微笑ましいなぁ。伊黒さん、私も転んで……まぁいっか、蜜璃ちゃん幸せそうだし)
幸せそうな蜜璃ちゃん達の側でずっと倒れっぱなしな訳にも行かず、起き上がろうとすればすっと手を差し出された。
「あ……ありがとう」
「別にお前のためじゃない。こんなところでいつまでも寝ていたら他人に迷惑だからな」
差し出された手を握って起こして貰うと、根は優しいのになんでこう素直じゃないのかなぁと、思ったのも束の間で……
「陽奈子!大丈夫か…おっ、とと…」
「危ない!」
止まりきれなかった杏寿郎が、私の隣に立ってた義勇さんにぶつかって、2人とも倒れ込んだ。
「どうしてお前に押し倒されなければならないんだ?」
「す、すまんっ!…なかなか舵取りが難しくてな…」
「舵取り…他に言い方があるだろう…。どうでもいいが早くて退いてくれ、周りの視線が気になる」
2人の状況は確かに周りから注目されちゃうかもしれない…だって、杏寿郎が義勇さんを押し倒してるから。イケメンがイケメンを押し倒す…この状況は確かに誰でも凝視しちゃうかも…
(あ、写真撮っとこう…)
カシャッとシャッター音が鳴るとそれに気づいた義勇さんがこちらをギロリと睨んで「今すぐそれを消せ」と言わんばかりだ。
仕方なく消すことに…フリだけど。違うフォルダに移してバレないように保存しておくことにした。2人にはもちろん内緒。
(後で玲愛ちゃんに送ってあげよ!)
みんなやっぱり飲み込みが早くて、あっという間に滑って下りて来ると、お兄ちゃんが耳打ちしてきた。