第12章 緊張と白銀
~煉獄side~
「襲ったりはしない。ただ、陽奈子とこうしていたいだけだ…嫌だったか?」
「そっ、そんな……こと…ない、です。」
恥ずかしさで真っ赤になった顔を両手で覆っているが、心なしか嬉しそうにも見える。そんな表情も愛おしくて…同棲の許可も貰えた嬉しさもあって、つい気持ちが舞い上がってしまう。
覆った両手を退かすと再び唇を奪う……
「お楽しみのところ悪いけど、夕飯の支度が出来てるわよ?」
「っ!?」「お、お母さっ!!!」
「そういう年頃なのは分かるけど、父さん達にバレないようにね?」
お義母さんはにこりと微笑み、手をヒラヒラとさせ「待ってるわよ~」と一言残して行ってしまった。
「今の…どこから見られてたの?!?!」
「よもや…見られていたとは……すまん」
お義母さんには変な誤解をされた。いや、勘違いをされても可笑しくない状況だった。どんな顔をすればいいのか…
その後、少し気まずさはあったもののお義母さんは全く気にしてなさそうだった。むしろなぜだか上機嫌であった。
美味しい手料理をご馳走になって、風呂にも入らせてもらうと明日のために早めに寝ることにした。
もちろん、陽奈子と同じ部屋だが布団は別で…少し寂しさを感じつつも、先程の失態を思い出すとさすがに一緒には寝れないだろう…
寝る前に軽くキスを交わして眠りについた。
翌朝、朝早くからスキー場に繰り出すことになっていた。
身支度を整え、バタバタと慌ただしく帰ることを謝罪すれば2人とも笑顔で「気にしなくていいよ、またおいで」と送り出してくれた。
スキー場に着くと宇髄達と合流する。
燈志くんと郁茉少年も一緒に滑る予定と昨日連絡を入れていたので、その場で軽く自己紹介。
ゲレンデに着くと、初めての光景に気持ちが昂ってしまい、気付けば雪だるまなんてものを作ってしまった、小さめだが。なんて子供っぽいことを…そう思って顔を上げれば、陽奈子も同じことを隣でしていた。
「恋人、雪だるま…?」
そう言って俺の作った歪な形をした雪だるまの隣に、陽奈子の作った小さな雪だるまを寄り添わせるように置いて、小さく微笑んだ。