第12章 緊張と白銀
「そう言えば、今日はお友達とどこかに泊まる予定だったんでしょう?ごめんね、これじゃ無理そうね…」
この後のことを思い出してこんな状態になってしまったことをお父さんの変わりに謝ってくる。
「仕方ないよ。でもとりあえず、この状況を説明しとかなきゃ…どのくらいで起きるかな?」
「2人でうちに泊まって行けばいいじゃない。」
まきをさんに連絡しよう、と持っていた携帯をお母さんの言葉に驚いて落としてしまう。
「え!?だって杏寿郎初めて来たんだよ!?それに…お父さんにも聞かなきゃだし」
「大丈夫よ。あんなに楽しそうにしてる父さん、久しぶりに見たわ。杏寿郎くんの言葉がすごく嬉しかったのよ、でなきゃこんなになるまで一緒に飲まないわ。だから遠慮なく泊まっていきなさい?」
結局、実家に一泊させてもらうことになった。
明日は皆でスキー場で遊んだその後、町へ案内する。久しぶりにゲレンデに繰り出せると思ったら、今からうずうずと血が騒ぐ……
(杏寿郎にちゃんと言ってなかったけど、明日私が滑ってるとこ見たらどんな反応するかな…?)
整った顔立ちで眠る杏寿郎の髪を撫でるとぴくっと反応する。それも一瞬で、規則正しい寝息が再び聞こえた。
その寝顔に吸い寄せられるようにひとつキスを落として、側に横になると次第に目蓋が重くなっていった…
どのくらい経ったのか…いつの間にか私も眠っていて、大好きな香りが鼻を擽り目を覚ます。たくましい腕に抱き締められ、ぼんやりとした視界がはっきりすれば愛しい人の優しい眼差しが向けられる。
「あれ、…わた、…し?」
「すまなかったな、まさか潰れるとは…それよりも、あんなところで寝てしまっては風邪を引くぞ?」
「そっか、あのまま私も寝ちゃったんだ…ありがとう…でも、実家でこれはちょっと恥ずかしい、かな?」
そう言って布団から出ようと体を起こすと、腕を引かれて杏寿郎の胸に倒れ込んでしまった。
「もう少し…このままでいてくれ、今は少しでも君と離れるのが惜しい…」
天地が逆転したことに気付いた時には、唇が塞がれていて甘いキスが降り注ぐ。
だけど、ここは実家…いつ誰が入ってくるかわからないこの状況に、緊張と恥ずかしさで爆発しそうだ。すぐにでも襲ってきそうな杏寿郎を制すると…