第12章 緊張と白銀
突然現れて陽奈子に抱きつき嬉しそうにしていると思ったら、こちらを敵意むき出しで睨んでくるこの少年…
「こら、郁茉。きちんと挨拶しなさい。それに年上の人にあんたは失礼だ、謝りなさい」
「う…すみません……弟の郁茉です、よろしく…おねがいします…」
お義父さんに諭すように言われると、渋々と挨拶をしてくれたこの少年…そうだ、陽奈子の弟。以前陽奈子がシスコンで困ると言っていたが…なるほど、わかった気がする。
(愛する姉を盗られて、妬いているのか…なるほどなるほど、他人が嫉妬するとはこのように映るのか…可愛い弟だな、千寿郎を思い出す…コロコロと表情が変わるところもまた陽奈子に似ているな。)
そう思えばいつもの癖で頭を撫でていた。
「な、何すんだよ!!」
「あ、すまん。つい癖で…俺にも歳の離れた弟がいてな。こうやって頭を撫でると嬉しそうにするんだ。」
「子供扱いすんなよ…!」
そんなやり取りをしていると今度は開いていた襖から顔を覗かせて「もう終わったの?」と声を掛けてくる青年が…
「あ、いつも陽奈子がお世話になってます。兄の燈志です、本当に噂通りの人だね。陽奈子が迷惑かけてないかな?」
「は、初めまして煉獄杏寿郎と申します!迷惑だなんてそんな…逆に僕が迷惑をかけている方で…。」
「ははっ!そんなに畏まらなくても大丈夫だよ!歳近いんだろ?仲良くしようよ!あ、今から飲むの?俺ももらおうかな!杏寿郎くんも、はいはいっ!」
お義兄さん…と呼ぶべきか、それとも燈志さんか……
一先ず皆で乾杯をすると、すぐに燈志さんが声を書けてきた
「ねぇ、2人の馴れ初め聞かせてよ!興味あるんだよね…どっちから告白したの?」
興味があると言ったが、表面はそうであっても本当は大事な妹がどんな人と付き合ってるのか心配なんだろう。疑いを含んだ瞳をした燈志さんに、決して軽い気持ちでいるわけではないことをわかってもらうよう話し始めた。
「気持ちを伝えたのは僕からです。陽奈子さんの情深いところ、誰にでも分け隔てなく優しいところ…夢に向かってひたむきに頑張る姿。そんな陽奈子さんに心惹かれました。」
燈志さんに向かい合い、真っ直ぐ伝えれば何かを悟ったように安心して「よかった!」と笑ってくれた。