第12章 緊張と白銀
そんなやり取りで少し緊張が解れるとまた本題へ入る。
「悪いね、杏寿郎くん。改めて今日来た理由を話してくれるかな?」
「は、はい!実は…陽奈子さんと同棲をさせて頂きたいと考えております。それで今日はそのご許可を頂きたく、ご挨拶に参りました!!」
結婚の挨拶でもないが、深々と頭を下げると暫く沈黙が続く。その沈黙を破ったのは意外にもお義母さんだった。
「ふふっ、とても律儀な方ね。それにすっごく男前だしね?陽奈子には勿体ないくらいだわ…」
「お母さん!も~う…」
「そうだな…確かに勿体ないくらい、誠実そうな人だな……一ついいかな?…杏寿郎くんは陽奈子のどこに惹かれたんだ?」
その問い掛けに俺は迷うことなく答える。
陽奈子に惹かれたところは沢山ある、一緒に過ごしていくうちにそれがどんどん増えていて挙げれば切りがないだろう…
「陽奈子さんは、とても情深く、思いやりがあって、目標や夢に向かって努力を惜しまない努力家な女性だと思います。たまに見せる意外な一面に驚かされますが、それも陽奈子さんの魅力の一つだと思っています。そんな彼女に強く惹かれました」
「…そうか。……うん、そうか……。」
何度も嬉しそうに頷いて、先程までの強面の表情はどこへいったのか…目尻に細かい皺を作って優しく微笑む。
「ありがとう、そんなに陽奈子のことを強く想ってくれているんだね…嬉しいよ。それだけ陽奈子を大切にしてくれているんだ、いいんじゃないか、同棲しても!」
「あら、意外な反応。反対しないの?この間は娘は渡さないなんて言い張ってたのに」
「なっ?!もう黙っててくれ!…迷いがなく真っ直ぐ気持ちを伝えられる人だ。陽奈子もすごく幸せそうだしね。まぁお試しってことで始めてみればいいと思うよ」
そう言われ「ありがとうございますっ!!」とまた深くお礼を言うと陽奈子と顔を見合わせて微笑み合う。それを見ていたお義父さんがまた口を開いた。