第12章 緊張と白銀
~煉獄side~
襖を開けたそこには……まさに陽奈子が言った通り、野生の熊。
…に似たお義父さんが腕を組んで座っている。
堂々たる風格を見せつけるように、どっしりと胡座をかいて座っている。その鋼のような体格のよさに少々だじろぐが、ここで怖じ気付く訳にはいかない。
座るよう言われると、びしっと正座をしてお義父さんに誠意を見せるよう全力で挨拶をする。
「初めまして陽奈子さんとお付き合いをさせて頂いてます、煉獄杏寿郎と申します。本日はお忙しい中、お時間を作っていただきありがとうございます!これ、皆さんで召し上がって下さい。」
手土産を手渡すと「ありがとう、頂くよ」とその土産をお義母さんに手渡して、再び腕組みをしてジロリと睨みを利かせるように俺を真っ直ぐ凝視して口を開いた。
「わざわざ遠いところまで出向いてくれてありがとう。陽奈子の父です。それで、今日はどんな用件かな?」
「単刀直入に言わせていただきます。実は、陽奈子さんと……」
「やっぱり、悪い…ちょっと待ってくれ…」
意を決して喋り出したのはいいが、俺の前に手を出して制するお義父さん。当然その「待った」を無視することは出来ず、次の言葉を待っていると…
「陽奈子は…一人娘だ。今まで大事に育てて来た。そんな娘を易々と嫁にやれる程、俺も寛大な心の持ち主じゃないんだ…」
「え…、お父さん…嫁って…何の話…?」
少し話が行きすぎているお義父さんを陽奈子が遮ると、互いの頭に疑問符が浮かぶ。
「は…?結婚の…話じゃないのか?…母さん、どういうことだ!?結婚の挨拶に来るって…」
「あら、どうだったかしら?私は挨拶に来るとしか言ってないけど?結婚なんて一言も言ってません」
どうやらお義父さんの誤認だったようだ。
陽奈子をちらっと見ればなんだか少し怒っているような…
「お母さん!!またお父さんのことからかったでしょ!?真面目な話なんだから、からかわないでよ!」
「え~何のこと?…少しは緊張、ほぐれたでしょ~?大体私は挨拶に来るってことしか言ってないわよ。父さんが勘違いしただけよ~、ねぇ杏寿郎さん?」
不意に振られて困っていると「お母さん!?」とまた怒った口調でお義母さんを睨んでいた。