第12章 緊張と白銀
~夢主side~
実家に行く数日前、お母さんに電話で「会って欲しい人がいるの」と伝えればすごく喜んでくれた。
でも、お父さんはただ一言だけ…「連れてきなさい」とお母さんを通してそう言われた。
電話を替わろうとしてくれたけど、お父さんは出てくれなかった…どう思ってるのかな?
少し不安があるけど…杏寿郎だって緊張してるから、私がしっかりしないと…!
実家の扉を開け「ただいま!」と挨拶すればお母さんが出迎えてくれた。
きちんとお化粧もして…私が去年、母の日にプレゼントした小さな花柄スカートまで履いて…そんなにめかし込まなくてもよかった気もするけど。そんな私を他所にお母さんは杏寿郎を見て目を輝かせてる。
「初めまして、煉獄杏寿郎と申します。本日はお時間を作っていただき、ありがとうございます!」
「ようこそいらっしゃいました、いつもお世話になってます。陽奈子の母です。聞いていた通り、素敵な方ですね」
お母さんには少しだけ杏寿郎のことを話していた。
その容姿を上から下から舐め上げるようにじろじろと見つめると、片手を頬につけてうっとりとしている。
「お母さん!ちょっと変な目で見ないでよ!」
「え~、気のせいじゃないかしら?あ、立ち話もなんですからどうぞ上がって?」
「お、お邪魔します…」
部屋の前でお母さんが「着ましたよ」と声をかければ、ゴホンと咳払いを一つして「入りなさい」と抑えのきいた声でお父さんが答える。
「…失礼します。」
いつも大きくて勢いのある声が、今は小さく感じた。
一言声をかけて、スッと襖を開けるとそこにはいつもと様子が違うお父さんが両腕を組んで座っていた。