第12章 緊張と白銀
~煉獄side~
今日から年末年始の休みに入った。
つまり今日、陽奈子の実家に行くのだ。
恐らく俺は今…人生で一番、緊張しているだろう……
あれこれ考え込んでしまったせいで、昨日は全く眠れなかった…
小旅行も兼ねての今回の計画は、俺達は新幹線を使って陽奈子の実家へと行き、宇髄達は会社の車で先に陽奈子の地元に向かう。宿は取ってあるから、挨拶が終わり次第そこで合流という段取りだ。
挨拶のことを考えると、握り拳につい力が入る。
緊張のせいで顔が強張っているのか、心配そうに陽奈子が覗き込む。
「大丈夫…?」
「すまない…やはり緊張してしまってな」
落ち着かない心境を伝えれば「きっと大丈夫」とにこりと微笑む。その愛らしい微笑みに少し緊張が解れると、大きく深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。
窓に目を向ければちょうど、トンネルを抜けるところだった。
目が眩むほどの光に一瞬目を閉じて、再び開けばそこは白銀の世界が辺り一面に広がっていた…
「おぉ!!キラキラと輝いてるぞ陽奈子!!」
「あはは、私は見慣れてるからそこまで新鮮味はないけど…この景色はいつ見ても綺麗だなって思えるなぁ~、地元に帰ってきたって感じ?」
「これが陽奈子の故郷か…。テレビでは見たことがあったが、これ程辺り一面雪だらけの世界を実際に見るのは初めてだ…絶景だな!」
初めて見る白銀の世界に先程の緊張が嘘のようにどこかへ行っていた。
その景色を見ていた陽奈子がポツリと一言。
「玲愛ちゃんにも、見せたかったなぁ…」
「そうだな。不死川も連れてきたかったな」
そうなのだ。不死川と百瀬少女は今回来れなくなってしまった…連絡があって百瀬少女の体調があまりよくないと言っていた。
少し気掛かりだが、不死川が側に付いていれば大丈夫だろう……
「そうだ!写真、撮って送ってあげよう!」
「それはいいな!きっと百瀬少女も喜ぶだろう」
そんなことを話ながら、気付けばもう降りる駅だ。
「よし…!行こうか?」
片手を差し伸べると、それに答えて添えられた小さな手と共に決意を握り締め歩きだした。