第11章 鍵とサンタ *
すんなりと承諾するとケーキをすくって「はい、あ~ん」といかにもな台詞と共に口へと運ぶ。ぱくっと口にすると、とても旨い…だが……
「自分で頼んでおきながら、なかなか恥ずかしいものだな…」
「ふふっ、前に私に食べさせてくれた時みたいだね。私もあの時すごくドキドキしたなぁ…あ、もう一口食べる?」
(そう言えばそんなこともあった。初めてフレンチトーストを作って貰った時、陽奈子に味見と言って食べさせたな…)
恋人になる前の自分に、今すごく幸せだと伝えてやりたい、と思いつつ幸せを噛み締めるように目の前にあるケーキを頬張った。
「今度は俺から食べさせてあげよう、ほら」
今度はお返しに、と食べさせてやると、嬉しそうにクリームを口端に付けながら頬張る。それがまた可愛くて…ついペロリとクリームを舐めとるとそのまま唇を奪う。
「ぅんっ……杏寿、郎…」
「ん……甘いな。」
唇が離れると潤んだ瞳で見つめてくる。酒が回ったのか陽奈子の身体は少し火照っていた。心なしか顔も少し赤い…そんな顔をされると我慢できなくなってしまう……久しぶりに触れた陽奈子の温もりに身体がじわりと反応し始める。だが、まだ大事なものを渡していない。ここは堪えるんだ、と自身に言い聞かせ集まりかけた熱を冷まさせる。
「陽奈子、これを受け取ってくれ」
「わぁ、プレゼント…開けてもいい?あ!私からもあるよ!じゃ、せーのっで開けっこしよっか?」
可愛く包装された小さな箱を手渡されると同時に包みを開ける。
「わぁ!可愛い時計!これなら毎日付けられる、ありがとう!」
「俺とペアの腕時計なんだ、これなら毎日側にいる気持ちになれるだろう?そういう陽奈子のプレゼントはブレスレットだな、レザーのものは持ってないから…ありがとう!」
「実は…それも私とお揃いなの。ふふっ、2人とも今回はお揃いで揃えてたんだね?考えること一緒だね!」
お互いが用意したプレゼントはそれぞれペアのもの。だけど、それ以外にも俺は別で用意していたものがある。これを今渡すのは少し悩んだが……
「実はもう一つ渡したいものがあるんだ。」
「これは…?」
ラッピングをしていないそれをちゃりっと音を立てて渡すと不思議そうな顔をする。