第10章 つどい
~夢主side~
あまり杏寿郎を困らせることはしたくない…だけど会えなかった分、離れるのが寂しくてもっと一緒にいたいと、ついわがままを言ってしまった。
大きな背中の温もりを感じながら返事を待っていると、振り返った杏寿郎の表情はやっぱり少し困ったようだった。
「陽奈子…俺だって本当はもっと一緒にいたい。君にたくさん触れたいとも思う…だが、今は大事な時だろう?だから落ち着くまでは自分の身体を大切にして欲しいと俺は思っている。体調を崩してしまっては今まで頑張ってきたことが水の泡になってしまうぞ?」
そのまま優しく腕のなかに収められる。杏寿郎のトクトクと音を立てる鼓動が耳に心地いい。
「うん…ありがとう。そうやって応援してくれてるのはよくわかってる。だけどっ……一緒にいたいって、触れたいって…思うのは、杏寿郎だけじゃないよ…?私だっていっぱい杏寿郎に触れたいもん」
今日の私はどうしてだか、こんな大胆な言葉もスラスラと溢れるように口から出ていく。
すると杏寿郎の顔はみるみる赤くなっていき、口元を手で覆うと顔を反らした。
「…よもや。いつもの君らしからぬ発言だな…正直、今とても嬉しい…が、照れてしまうな。これは参った」
「そ、そんな風に言われると私まで恥ずかしくなっちゃう……じゃぁ、キスだけ…それ以上はしない。…だから…ぎゅってして一緒に寝ない…?」
「キスだけ…今日の君は本当に別人だな。それはそれで嬉しいが…うむ、それならば特に問題はなさそうだな。それでは寝る支度をして、早めに寝るとしよう!」
それから交代でお風呂に入ると、いつもみたいに髪を乾かし合って寝る準備を進めていく。
本当は一緒に入りたかったけど、それを言ったら杏寿郎は蹲ってしまって「頼むからもうこれ以上、煽らないでくれ」と言われたので諦めた。それにしてもついこの間まで一緒にお風呂とか…あんなに恥ずかしがってたはずなのに、ホントに不思議だ。何が私をここまで大胆にさせているのかよくわからないまま、布団に入り杏寿郎の腕に抱き締められた。
「おやすみ、陽奈子…」
「おやすみ…杏寿郎、大好き」
そう言って自分から唇を押し付けるようにキスをすると、杏寿郎はお日様のような笑みで「俺も大好きだ」と優しい声音で囁いた。その声が睡魔を誘うようで…自然と目蓋が閉じていった。