第10章 つどい
~煉獄side~
勢いで抱き締め返したが………
視線が気になる。
もちろん、陽奈子からの抱擁はとても嬉しい。離れがたいくらいだが、先程から見てくる輩の中には少なからず陽奈子をそういう目で見ている奴もいるだろう。この先のことを頭のなかだとしても、妄想されることは気分がよくない……
これ以上変なことを考えようとする奴が増えないよう陽奈子から少し身体を離し、手を握って「会えて嬉しいぞ」と真っ直ぐ伝える。
すると、今にも泣き出しそうな顔になった。
「ど、どうしたのだ!?どこか痛いのか!?」
「違うの。ごめん…嬉しくて、つい……2週間会えないだけで泣きそうなくらい、会えたのが嬉し過ぎて…。」
もうその言葉だけで充分だった。
こんなにも想ってもらえるとは、本当に俺は幸せ者だと改めて思う。もちろん、俺も負けないくらい想っているが…相思相愛とは、このことを言うのだろうか……
「ありがとう!俺もとても嬉しいぞ!…寒いだろうから、家へ来るか…?も、もちろん深い意味はないぞ!?」
「え?あ…ふふっ。お邪魔じゃなければ…行ってもいいの?」
「当たり前だろう。君は特別な存在なんだ、いつでも来ていいぞ!」
そう言うと頬を染めながら「ありがとう、じゃお邪魔します」とにこりと微笑むと俺の手を握り返した。
その手先が少しばかり冷たい気がしたので、握ったまま自分の着ているダウンポケットに突っ込む。
「わぁ、暖かい。杏寿郎は天然のホッカイロだね?」
「ははっ!そうだな。俺は体温が高いから、寒い時は何時でもくっつくといいぞ!もちろん……」
耳元に口を寄せて「全身で暖めてもいいんだがな」と冗談で言えば、耳まで真っ赤にして固まってしまう陽奈子。いつまでも初心な所がまた彼女の魅力でもあるが、今はそんな反応をされてしまうと冗談ではなく、本気でそうしてしまいたくなる。