第10章 つどい
~夢主side~
綾ちゃん達と別れて、電車に乗っていると突然杏寿郎から電話が掛かってきた。
「(わっ!ど、どうしよう!?出ちゃ不味いよね…人が少ないとは言え電車の中だし……あ、切れちゃった…め、メール!!)」
そう思えばすぐにメールを打ち込んで送信すると、すぐに返ってきた。
『待っている。』
その短い文面にきゅっと心が締め付けられるくらい嬉しくなった。
電車から降りるとすぐに掛け直す。するとワンコールも鳴らないうちに杏寿郎が電話に出た。ずっと携帯持っていたのかな…?
『すまないな、急に。今帰りか?』
「大丈夫だよ!うん、さっきまで綾ちゃん達と一緒だったの。それでどうしたの?」
『あぁ、その…来月クリスマスだろう?だから…忙しいとは思うんだが、一緒に過ごせないだろうかと思ってな。』
その言葉が嬉しくてつい大声で「私も一緒に過ごしたい!」と叫んでしまった。周りの視線が痛くて恥ずかしい…
『そんなに喜んで貰えるとは、俺もすごく嬉しいぞ!シフトはもう出ているか?もし、出ていたら空いてる日を教えてくれ。俺が陽奈子に合わせるから』
「う、うん…ありがとう。えーっと、ちょっと待ってね…あ、写真撮って送るね?…あれ?杏寿郎、今外なの?」
電話越しに電車の音が聞こえた。
『うむ。今日は冨岡のところで飲んでいてな。今帰りだ』
それを聞いて、今から少しでも会えるんじゃないかと少し嬉しくなる。
「あのっ、杏寿郎!!今からそっちに行くから待ってて!!」
そう言って電話を切ると、走り出し駅へと向かった。今日会えなければ、次は何時会えるか分からなかったし、声を聞いただけで無性に会いたいと思ってしまったから…そう思えば身体が勝手に動いていた。
電車から降りて改札をややかけ足気味で抜けると、さっきの電話で察してくれたのか杏寿郎が待っていてくれた。
「…杏寿郎っ!!」
がばっ
「陽奈子!?」
会えた嬉しさで気付けば杏寿郎に思い切りぎゅうっと抱き付いていた。周りの目なんか今は気にならない。
それに答えるようにぎゅっと抱き締め返してくれた。2週間ぶりの大好きな杏寿郎の匂いに包まれると、とても心が落ち着いた。