第10章 つどい
~煉獄side~
一人で飲みに出たはずが、話し相手欲しさについ馴染みの店へと足を運んでしまった。
見慣れた暖簾を潜り、引戸を開けると店主へと声をかける。
「冨岡、邪魔するぞ!」
「珍しいなお前一人とは…陽奈子と一緒じゃ…さては何か」
「誤解しないでもらいたい!君が心配するようなことは何もないぞ!!」
冨岡が何を言いたいのかわかったが、それを口にさせないように遮る。ただ会えていないだけで、他は何も問題ないのだ。所謂…ら、ラブラブと言った所だろう…。
カウンターに座ると冨岡が小上がりを指差して「あいつと一緒じゃないのか?」と聞いてきた。差された先には宇髄が一人小上がりに座ってこちらへ手をひらひらと振っている。
「よーう、煉獄!さっきぶりだな!一人飲みか?」
「む?そう言う宇髄こそ、一人ではないか?よし、共に飲もうっ!!」
と席を立とうとすると「悪ぃな。今日は先約があるんだ」と断られた。宇髄が酒の席を断るなんて珍しいことだ、と不思議に思いながら「それでは仕方がないな」と立ち上がった腰を再び椅子へと戻す。すると店の引戸が開いた。
「ごめん、天元!遅くなっちゃっ…あれ…煉獄さん?」
「む?あ、君は確か宇髄の恋人の…」
「お久しぶりです、まきをです!家具屋ぶりですかね?あ、そうそう!さっき陽奈子ちゃんに会いましたよ!そこで面白いことが……っととと。」
何か言いかけて口を手で押さえる。それを見逃すわけもない宇髄が「面白ぇこととなれば、聞かせて貰おうじゃねーの!」と片手にジョッキを持ってビールを流し込んだ。宇髄にとっての酒の肴は面白い話が一番合うのだろう。
「いや~……こ、これは内緒の話だから、言えないの。ごめんね…?あ、そうそう!天元が食べたいって言ってた美味しいおはぎ買ってきたから、帰ったら食べよう?でも、記念日におはぎなんて…」
「ばーか。誰が記念日はケーキで祝うって決めたんだよ。俺がお前とそれを食いたかったんだから、それでいいだろ?それに、記念日を一緒に過ごせるだけで充分だしな!」
なんだかこっちが恥ずかしくなってしまうような甘い台詞に「天元…」と嬉しそうに微笑んでいるのを見て、なんとなくその姿が陽奈子と重なる。