第1章 出逢い
「いただきます」
小さめのテーブルに、自分用の椅子とほとんど使われていない寂しそうなもうひとつの椅子。そこは自分のカバン置き場になっていた。
毎日一人のごはんに慣れたつもりでも、なんだか今日はいつもより寂しく感じる。
「(一人のごはんって寂しいし、美味しくないな…ごはんはみんなで食べると美味しいって杏寿郎言ってたなー…ご飯杏寿郎と食べたらすごく美味しい気がする。目の前で美味しそうに食べてくれそうだもんね。それに触発されてあたしもいっぱい食べて太っちゃいそう…)」
なんて考えていると自分がニヤニヤしていることに気づいた
「……っ!?な、なんで!!何考えてるんだろ、絶対疲れてる…早く寝よ!!」
目の前の食べかけのお茶漬けを勢いよく口に掻き込んで食事を終わらせる。
歯磨きやストレッチなど済ますと、勢いよくベッドにダイブし、今日の仕事内容を思い出していく。
「(カトラリーはあそこに置いて、メニューはランチが終わったら全席回収を忘れないように……)」
気付くと瞼が完全に閉じてしまい、陽奈子は眠ってしまった
ピピピピピピ………
アラームが鳴る音で目が覚める。
「…ん、うーーん…、あれ、いつの間にか寝落ちしちゃってた…」
カーテンの隙間からは朝日が差し込んできていた。
「っよし!起きるか!!」
ベッドの上でうーんっと伸びるとカーテンを開けて朝日を一気に取り込む。
「天気いいから早めに洗濯物干しておこう!」
一通り家事をこなして、身支度を整えると出勤すべく、玄関を出る。
「あ、そうだ!今日は燃えるごみの日だ!」
慌ててごみ袋を取りに行き、回収場へ持っていく。
「(一回忘れちゃうとすぐ溜まっちゃって大変なんだよね…)あれ?」
目の前にはごみ袋を持った目付きがすごく悪い人。
「…あ?」
「(ひょえーー!!睨まれた!)お、おはようございます!い、いってきます!!!」
怖すぎて逃げてしまった。
すると後ろから追い掛けてくる。あの目付き悪い人が。
「(んな!?なんでなんでなんでー!?私何かした!?)」
「おい!てめェ!……ゴミ持ってどこ行くんだよォ!?」
あまりの怖さにゴミ袋を持ったまま逃げ出していたのに気付く。
「え?」
意外とあの顔で親切なんだ…