第1章 出逢い
「あ、もう着いちゃったね。楽しい時間はあっという間ー」
杏寿郎はそれを聞くとニカッと笑ってそれに答えてくれる
「もう互いに知り合いではなく友達になったのだ、またいつでも会える!陽奈子の働いているところもわかったしな!では、また会おう!気をつけて帰るんだぞ?」
杏寿郎はまた頭をポンポンとすると片手をひらっとさせて背を向け歩いていった。
「(もー!また子供扱い…私ってそんなに幼稚に見えるのかなー?うーん)」
そんなことを考えながら自分も帰路に着くべく、改札を抜け電車を待つのだった
家に着くと誰もいない暗い部屋に「ただいま」と言う。
もちろん「おかえり」と返してくれる人などいない。
専門学校へ入学してからこのアパートで一人暮らし。
まだ数年しか住んでいないが、ホームシックになることが多々ある。
「お母さんのごはんが食べたいな…一人暮らししてはじめて親の有り難みを知るって言うけど、ホントにそうだな…」
杏寿郎といたせいだろうか、暖かくてふわふわした気持ちが、暗くて静かな部屋に入った途端、急に寂しい気持ちになる。
「さぁて!気分を変えるべくお風呂に入りますかねー!今日は入浴剤なんにしよっかなー?」
寂しい気持ちを抑えて、今日1日の疲れを癒すためお風呂に入ることにした。
ちゃぷん
お風呂に浸かりながら、改めて今日の出来事を振り返る。
「(お店のスタッフさん達にはすごく恵まれてるな、うん。環境もすごくいいし、何より家からそんな遠くないし!あのおばあさんとおじいさん、素敵な夫婦だったなー、私もあんな夫婦になれる人と巡り会いたいな…)」
そんなことを考えていると、杏寿郎の顔が浮かぶ
"気を付けて帰るんだぞ?"帰り際にそう言いながら頭をポンポンされた時を思い出す
「(いや、いやいやいや!なんで杏寿郎が出てくるの!)」
バシャッバシャッ
脳裏の記憶を書き消すように、顔にお湯をかけた
お風呂から上がって、髪を乾かす。
ドライヤーを当てていると風になびく自分の髪が、鏡越しに映る。
「(あの夕日に照らされてた杏寿郎の髪、綺麗だったな……!?もう!やめやめ!!ごはん食べよ!)」
夕飯を食べようと冷蔵庫を開けると空っぽだった。
幸いなことに冷凍ごはんがあったため、今日はそれでお茶漬けにして食べることにした。