第9章 ハニハニ *
* * *
「ひゃっ!?なななに?!」
手の甲に蜂蜜が垂れると、視覚が奪われているためそれが何か分からず陽奈子の身体が大きく跳ねた。
「むっ!?すまない!蜂蜜を扱ったことがなくてな…とりあえず、これを先に食べてくれ」
「え?あ、うん……んぅっ……甘い」
陽奈子の口へスプーンを入れると、唇の端へ少し蜂蜜がついた。それを赤い小さな舌がぺろっと舐めとる。
その仕草にゾクリと身体が小さく震えた。
すぐにでも理性が崩れ去りそうになるほど、なんとも色気と厭らしさが混じり合っていた。
「こっちにもついているぞ…ほら、ここだ。」
そう言って陽奈子の口元へ手の甲を持っていけば、また小さな舌でぺろりと垂れた蜂蜜を舐めとる。
「んぅ…」
「この蜂蜜の味は覚えたな?」
そう聞けば少し頬を染めて小さくこくりと頷く。
そして次の小瓶へ手を伸ばそうとすると、陽奈子がゆるゆると俺の腕を掴む。
「どうした?」
「…やっぱり、これ取っちゃダメ…?杏寿郎にこんな姿見られるの…恥ずかしい……」
そんな可愛いことを言われれば、もっと悪戯してやりたくなる。
「恥ずかしい?これはただの味見だぞ。君は何を想像して恥ずかしがっているのだ…?」
「…っ!!ち、ちがっ」
耳元でそう呟けば、更に顔が赤くなり首をふるふると横に振って否定する。反応がいちいち可愛すぎる。
「ほら、次の蜂蜜だ。口を開けてくれ…」
「…っ、……んひゃっ」
俺の声に小さい唇が開かれる。可愛い反応が見たくて、わざと陽奈子の唇の端へ蜂蜜をつけた。
「んっ!?ちょっ、これじゃベタベタになっちゃ」
「俺が舐め取ってやろう…」
ぺろっ、ぐぢゅぢゅっ
舌先で舐め取ると、唇の端についた蜂蜜を吸い上げるように啜る。
「ふぇっ!?杏、寿郎!?」
「ん…甘いな。陽奈子の唇もこの蜂蜜と同じ味がするのか、それとももっと甘いのか…」
そう言って唇を塞ぐと、舌先で陽奈子の口内を味わい始める。気づいた頃には俺の理性は完全になくなっていた。