第9章 ハニハニ *
~煉獄side~
少し遅めに終わった仕事から帰宅中、陽奈子からのメールを確認するとその内容に少しばかり嫉妬してしまう。
『今お店で義勇さんと試作してるよ』
わかっている。仕事で冨岡から色々とアドバイスを貰っていること…
だが、冨岡が陽奈子を想っていることに気付いてからあまり2人きりにはしたくない。身勝手な話だが、2人きりでいることで何かあるのではないかと、不安な気持ちと嫉妬心が渦巻く。俺らしくないのはわかっているが、それだけ陽奈子のことが好きなのだ。大切で大切で…
スマホを握り締めフラムに向かって走り始めていた。
店の前まで着くと、明かりが店から漏れていた。
もう日が落ちて辺りは真っ暗だ。だから余計に店からの明かりが目立つ。
そっと窓から覗くと目を疑うような光景が……
なぜか目隠しをされた陽奈子。
そして冨岡はあろうことか陽奈子に……キスでもするつもりなのか!?顎に手を沿えて今にも唇が奪われそうではないか!
その光景に俺のなかで何かがぷつりと切れたような音がした。
バンッ
「冨岡っっ!!!!!!」
勢いよく店のドアを開けると、叫んで冨岡を止める。
その声に驚いたのか陽奈子の身体がビクッと跳ねた。その肩を引き寄せ、自分の胸に陽奈子を抱き締める。
「び、びっくり…した!杏寿」
「冨岡、これはどういうことだ?いくらお前であっても許されることではない…」
「は…?何を言っている、俺はただ」
俺だと気づいた陽奈子を無視して、冨岡を睨みながらいつもより低い声で問いかけると不服そうな顔をして「頼まれたことをやっていただけだ」と言ってきた。
「は!?どういうことだ、陽奈子!?」
「え、なに?どうしたの?なんか怒って…る?」
目隠しを外した陽奈子は、不安げな瞳が揺れていた。