第8章 気持ち
歓迎会は宇髄が幹事となり、冨岡の店でやることになった。
一度家に帰って、身支度を整えてから集合することに。
俺が店に入るとみんな揃っていた。
「お前が最後だぞ、煉獄!早く座れ」
社長が急かす。ふと、反対の小上がりの席が"予約席"になっていることに気付く。
金曜日だし、別に気に止めることではないのだが…
席に着くと、なぜか俺の隣に百瀬少女が座る。
なんだか距離が近い気がするが…
「じゃ、乾杯するぞー…玲愛ちゃん、これからもよろしくー」
「かんぱーいっ!!!」
若干やる気のないような乾杯音頭と共に歓迎会が始まった。すると同時に百瀬少女が一気に距離を詰めて来る。
「杏寿郎さんっ!はい、おしぼりどうぞ!あ、何か取りますよ!好き嫌いはありますか?」
「(杏寿郎、さん?)…い、いや特にないが…自分で出来るからいいぞ?それに…今日の主役は君だろう?」
そう言えば百瀬少女は頬を染めてうつむき何かぼそぼそと呟いた。
「そういう…や…とこ…す……なんだもん…」
「何か言ったか?」
聞き返せば百瀬少女は「秘密です」と人差し指を口許に当てて微笑んだ。
歓迎会が始まって30分も経った頃、店のドアが開いて客が入ってきた。
その客を見て驚いた。
まさか、陽奈子達ではないか!!
確か綾少女の兄は冨岡だったな…
だからと言って兄の店を選ぶものか…?
「お兄ちゃん!来たよ~!席はあっちでいいの?」
「お前は…久しぶりに会ったのに、せめて挨拶ぐらいちゃんとしろ」
冨岡が呆れながら「席はあっちに取ってある」と指を指して教える。
すると、陽奈子がこちらに振り返り目を丸くする。
「え!?杏寿郎!?どうして…」
「新しく事務員入ったから、そいつの歓迎会」
近くにいた宇髄が俺の代わりに答えた。
そう言われれば陽奈子は「あ、なるほどね!」と納得したようだった。一瞬俺を見た瞳が強ばったように見えたが…気のせいか?