第8章 気持ち
あれからまた数日が経った。
百瀬少女はあのあとから弁当は持って来ることはなかった。
きちんと断ることが出来てよかったと、少し安堵する。
今日はまた打ち合わせながらフラムで昼飯を食べることになった。
フラムに着くと陽奈子の姿がなかった。
胡蝶がすぐに「陽奈子さんなら買い出しです」と教えてくれた。俺はそんなに顔に出ているのだろうか、まだ何も言っていないのに…
そんなことを考えていると店のドアベルが鳴り、陽奈子が戻ってきた……後ろに見知らぬ人達を連れて…
「も~、びっくりしたんだから!来るなら連絡してよ!」
「ごめんて!だって早く陽奈子に会いたかったんだもん~!」
やけに親しげな少女が陽奈子に抱きつく。
それを「店のなかでそういうことするな」と引き剥がす少年。
誰だ…?
そう思っていると陽奈子がこちらに気付く。
「あ、杏寿郎!いらっしゃい、お仕事お疲れ様です!」
「あ、あぁ。陽奈子、そちらは?」
目配せするように伺えば、嬉しそうに答える。
「幼馴染みの綾ちゃん!こっちが専門のお友達の駿くん!綾ちゃんの彼氏だよ。あ、綾ちゃんのことは前に教えたよね?」
「あぁ。いつも陽奈子と仲良くしてもらってるみたいでありがとう!俺は煉獄杏寿郎だ!」
と、挨拶すれば「あ、例の彼氏か…なるほど」と小さく呟いた。
その後俺達は仕事の話になったので一旦席に着くことに。陽奈子の友達は少し離れたテーブルに座った。
陽奈子は胡蝶が気を遣ってくれて友達と話をしていた。昼時だが、今日は珍しくそれほど混んでいないようだ。
いつものように注文を終えると、早速仕事の話へ入った。
「ここの間取りなんだけど、ここからここまではこの寸法で間違いねーよな?」
宇髄が図面を広げながら胡蝶と話を進めていく。
オーナーである悲鳴嶋さんはこう言った細かなことも任せていた。胡蝶への信頼があついのだろう。
そんなことを思っているとまたドアベルが鳴り、今度は少年が入ってきた。