第8章 気持ち
~夢主side~
前に杏寿郎から聞いていた子。確かに愛らしい女の子だ。
髪は栗色で緩くパーマをかけて、仕草も全部が女の子って感じだ。ネイルまできちんとしている。
多分今まで出会ったなかで、一番ピンクが似合う人物だと思う…
「は、初めまして!私は緋里陽奈子といいます。杏寿郎がいつもお世話になっています」
そう挨拶をして軽くペコリとお辞儀する。
すると愛らしい女の子もきちんと挨拶してくれた。
「こちらこそ、初めまして!百瀬玲愛です。いつも煉獄さんにはお世話になりっぱなしで…」
「そんなに世話していないぞ?」
「お世話になってますよ!この間会社の車の鍵、一緒に探してくれたじゃないですか~!」
だんだんと私の知らない会話になっていく。
付いていけず、どうしようかと思っているとそれに気づいた杏寿郎が会話を止めてくれた。
「…百瀬少女。すまないが、帰って貰えるだろうか?陽奈子と一緒に過ごす約束をしていたのでな!」
「…っ、そ、そうですか…邪魔してしまってすみません。それでは、また明日…陽奈子さんも…また。」
そう言って少ししょんぼりとして帰っていく百瀬さんの後ろ姿を見送った。
彼女の姿が見えなくなると、杏寿郎が私を家に招き入れるようにドアを押さえててくれる。
「すまない。家に来るとは思っていなくて…あ、上がってくれ。今お茶を出そう」
「あ、うん…あれ?」
玄関に入るとキッチンのところに可愛らしいお弁当箱を見つけた。
これは、どういうこと…?
その視線に気付いたのか杏寿郎が慌て始めた。
「陽奈子…その、これはっ…百瀬少女が…勝手に弁当を作って……いや、君に言おうと思ったんだが…」
その言葉を聞いて、さっきのやり取りを思い出す。
「…あ、それでそのお弁当箱取りに来たの?」
「そ、そうなのだ…何回も断ろうと思っているんだが…」
「そ、そっか……でも!お昼代、浮くからいいんじゃない?」
いい訳ない…本当はすぐにでもちゃんと断ってほしい。
どうして杏寿郎はあの娘からお弁当なんて作ってもらうの…?彼女の…私ですら数回しかお弁当作ってあげれてないのに……