第8章 気持ち
「煉獄っ!!てめっ、サボってねーでさっさと荷物おろしやがれ!!朝からイチャついてんじゃねーぞっ!!」
「す、すまん…陽奈子、また!!」
「ふふ、頑張ってね!」
微笑みながら陽奈子にそう言われると、つい頬が緩んでしまう。幸せを噛み締めながら、頑張ろうと気持ちを切り替えて仕事に戻った。
その次の日、会社へ行くと百瀬少女に呼び止めれた。
振り返ってみれば、目の前に可愛らしい包みを差し出される。
「あ、あの…昨日のお礼…です。」
「む、これは何だ?」
その可愛らしい包みを指差すと、頬を染め俯きながらもごもごと話す。
「えっと…ボールペンのお礼、です。他の人に聞いたら煉獄さん、ほとんど毎日お昼はコンビニだって聞きましたから…お、お弁当作ってきました!!」
「そんなに気を使うこともないんだが…折角心を込めて作ってくれたんだ、頂こう!!ありがとう」
お礼にと、一生懸命作ってくれたものを粗末に扱う不届きものがどこにいようか…ありがたく頂くことにした。
現場に向かっている途中、運転しながら煙草をふかしている宇髄が少し真剣な表情で俺に話し掛けて来た。
「煉獄…あれ、やめた方がいいぞ」
「む?何のことだ?」
いきなり言われて何のことだかさっぱりわからない。
「玲愛ちゃんのことだよ。お前に惚れちまってるだろうから、期待させるようなことしねー方が身の為だ。だいたいお前には陽奈子がいんだろ。彼女でもないやつから易々弁当なんか受け取ってんじゃねーよ」
「惚れている?そんなことないだろう!百瀬少女はお礼と言っていたんだ!それに折角作ってもらったものを粗末にすることは出来ん!!」
宇髄がなぜそう思うのかわからなかったが、食べ物を粗末にしたり、人の気持ちを蔑ろにするのは良くないと教わって来た。だから受け取って当たり前だと思っていた。
「はぁ?!どうみても惚れてるだろ!!あんなの繰り返してたら、いずれ陽奈子のこと傷つけるぞ。だから今のうち」
宇髄の口から"傷つける"と聞いて、言い終わる前に否定する。
「俺は絶対に陽奈子を傷つけたりしない!!」
「…その自信はどっからくんだよ、はぁー。めんどくせ。俺は言ったからな」
宇髄はそう吐き捨てるように横目で俺に言ってくると、煙草を押し消した。