第7章 疼き *
咄嗟に抱き締めて、そのまま倒れ込んでしまった。
陽奈子を押し倒すような形で…
「杏寿郎…」
気がつけば陽奈子の顔は目の前。
ふっくらした唇、赤く染まった頬、何より俺の理性を崩そうとするのは……
この密着してしまった体勢だ。
「…っ、す、すまないっ!!」
このままではまずいと思い、急いで離れる。
はずが、離れない。
「杏寿郎…」
いつの間にか陽奈子の腕が首に回され、動けなくなっていた。
至近距離で視線が合えば愛おしそうな瞳で俺の名前を呼ぶ。
こ、これはっ……離れなくてはっ!!
そう思った瞬間、陽奈子からキスをされた。
そっと触れるようなキスだった。
「よもっ!!!陽奈子…ダメだ…これ以上は……」
陽奈子の腕をほどいて、離れると悲しそうな顔で俺を見つめる。
「今日の杏寿郎、なんか変、だよ…?どうしたの…?」
「…すまない。」
なんと説明していいかわからず、ただ謝ることしか出来なかった。
きっと陽奈子は拒絶されたと思っているだろう…
誤解を解こうと向き直ると、悲しそうな瞳が揺れていた。
「陽奈子!ち、違うんだ!決して君のことが嫌な訳ではない!いや、むしろ大歓迎なんだがっ…お、俺は何を言っているんだっ……そのっ…」
言っていることが支離滅裂なのはわかっている。
どこから説明していいか分からず、焦って上手く言葉が出てこない。
「杏寿郎…ホントに…?」
「勿論だっ!!」
「よかったっ…」
安心したのか、俺をぎゅっと抱き締めてきた。
「すまない、不安にさせてしまって…陽奈子、聞いてくれ。」
それに答えるように俺も抱き締め返す。
そしてきちんと話そう、打ち明けるべきだ、と再び陽奈子に向き直る。