第7章 疼き *
~煉獄side~
胸に飛び込んできた陽奈子を力一杯抱き締める。
「杏寿郎の、匂い…会いたかった…」
すりすりと胸に頬を擦り寄せる陽奈子。
その姿にぎゅっと心が締め付けられる。
陽奈子の顎に手を沿えて、上を向かせる。
はっ、とした。
つい昨日、自分の気持ちを抑えると心に誓ったばかりだ。
と、咄嗟に身体を離していた。
ばっ
「…杏寿郎?」
「あ、いや、外だし…人目があるからなっ!帰ろうか」
そう言って誤魔化すように、陽奈子の荷物に手を掛けて持つ。
「あ、いいよ!」
「これぐらい、させてくれ。彼氏、なんだから…」
自分で"彼氏だから"と言って少し恥ずかしさが込み上げ視線を反らす。
そっと陽奈子横目で見ると、頬を染めながら「ありがとう」と微笑んで俺の手を握ってきた。
びくっ
握られた手が熱い。
流石にこれを振りほどけるわけがない。
なるべく意識しないよう、平静を装って……
陽奈子のアパートに着くと、陽奈子が部屋の窓を開けて空気の入れ換えをする。
「んー、もう9月末だけど、まだまだあっついねー…」
手で顔を扇ぎながら、開いている片手でTシャツをパタパタとさせる。
視線を下に移せば、服の隙間からちらちらと陽奈子の腹が見え隠れする。
「…っ!(堪えろっ、堪えるんだ!煉獄家の名に恥じぬよう…)」
それから視線を外し、なるべく別のことを考える。
「陽奈子、何か飲み物を飲んでもいいか?」
「あ、ごめん、気が効かなくて…ちょっと待っててね」
「あ、いや!俺が取りに行こう!」
自分で飲みたいと言ったのだから、それくらいやろうとドアに向かおうとする
「え、いいよ!杏寿郎はすわっ」
とんっ
ドア付近に陽奈子が立っていたため、軽くぶつかる。
「わっ…」
「陽奈子っ」
俺にぶつかった反動でバランスを崩し、倒れそうになった陽奈子を抱き締める。