第7章 疼き *
「俺、ねーちゃんから卒業するわ。電話してる時のねーちゃん、すげー幸せそうに笑ってたし、多分そいつならねーちゃん幸せにしてくれると思う」
「…へ?……み、見てたの!?」
まさか、電話してる姿を見られてたなんて…
隠れてしてたつもりだったのに、一体いつ…
「陽奈子、お前は昔から分かりやすい。郁だってもう鈍くないよ。よかったね、好い人に巡り会えて」
「お兄ちゃん…ありがとう。」
お兄ちゃんの優しい声に込み上げるものがある。
でも、それが溢れないよう堪えた。溢れてしまったら止められない気がしたから。
「でも!!俺はそいつ、まだちゃんと認めてねーからな!!ねーちゃん泣かしたら俺がぶん殴ってやるっ!」
そう言いながら拳を作って構える郁茉に、つい頬が綻んだ。
「ふふっ、ありがとう郁茉。でも、大丈夫。すごく優しくて、お日様みたいな人だから…」
首もとに手を持っていき、杏寿郎から貰ったネックレスに手を掛けた。
早く、明日にならないかな…
杏寿郎に、会いたい。
次の日、私は両親に見送られながら実家を後にした。
電車に乗ってから杏寿郎にメールを入れる。
『おはよう!今電車に乗ったよ!』
なんて返信が来るのか楽しみに、スマホをそっとバッグに戻して窓の外に目を移し、懐かしい景色を瞳に焼き付けた。
最寄の駅に着き、改札を出ると大好きな彼を見つけた。
「陽奈子!!」
手を大きく振りながら小走りでこちらに近寄ってくる。
「杏寿郎っ!」
そのまま杏寿郎の腕の中に飛び込む。
他人から見たら何ヵ月も会えなかった恋人同士がやっと会えたという感じに見えると思う。
たった4日だけど、私たちにとってはそれくらいに感じていた。