第7章 疼き *
~夢主side~
「…ねーちゃん、もう明日帰るの?」
寂しそうに眉を下げた郁茉が、荷物をまとめている私の側に寄って話しかける。
「うん。寂しいけど、またすぐ会えるよ。それに郁茉、そろそろお姉ちゃん離れした方がいいんじゃない?ほら、お母さんから聞いたけど、高校でけっこーモテてるらしいし!」
「…別に、モテてねーよ。俺はねーちゃんが好きだから、それでいいんだよ。女なんか興味ないねっ」
はぁ、この子はいつになったら私から離れてくれるんだろう…流石に高校生になれば変わるだろうと思ってたけど、ここまでシスコンだったとは…
若干呆れながら、止めたいた手を再び動かしてパッキングをしていると、お兄ちゃんが来た。
「陽奈子、荷物まとめるの手伝おうか?」
「ううん!大丈夫だよ、もう終わりそうだし」
優しく気遣ってくれるお兄ちゃんとも、明日からまた暫しのお別れだと思うとやっぱり寂しい…
そんなことを思ってると、お兄ちゃんが郁茉を何やら急かしていた。
「ほら、郁。ちゃんと言っとけ」
「わ…わかってるよっ…」
ポンとお兄ちゃんが郁茉の背中を押すと、郁茉がおずおずと私に話しかける。
「あ、あのさ、ねーちゃん。」
「んー?なーに?」
「俺、さ。ねーちゃんがすげー好き。」
いつも聞いているはずの"好き"が今日はなんだか違う言葉に聞こえた。
「うん…」
「でも……ねーちゃんには、大事な人…いるんだろ?」
「…え?…どして…」
バレていないと思ってた。あの時も上手く誤魔化せたはず。なのに、どうして気付かれたの…?郁茉、怒って、る?
「…ねーちゃん、分かりやすいからバレバレ。俺だってそんなに鈍くねーよ。…だからさ、俺決めたんだ。」
郁茉の目がいつもより真剣に見えた気がした。