第7章 疼き *
「おーし!次やるぞ、次!じゃ次は大富豪やろうぜ!」
従兄弟がはしゃいでトランプを広げる。
うちは本家だから、お盆と年末の年に2回は親族が集まる。
だけど今日は急な私の帰省を聞きつけ、みんなが集まってくれた。従兄弟もみんな男だらけで、女は私しかいないからみんな「会いたかった」と熱く歓迎してくれた。
みんなでトランプをしたり、昔話をして盛り上がっていると気がつけばもう遅い時間だ。
「あ、そろそろ私。寝るね…おやすみなさい!」
みんなと別れると、引っ越す前のままの自室に戻る。
杏寿郎が心配になり、スマホを手に取り再び電話を掛ける。「また連絡する」と言ってたけど、あれから2時間以上経っても連絡はなかった。
プルルル…プルルル…
コールが数回鳴るが、出る気配はない。
「寝ちゃった、のかな…?」
諦めて電話を切ろうとした時、受話器の向こうから掠れた声が聞こえた。
『…も…しもし…ん、すまない…陽奈子。寝てしまったようだ』
寝起きの掠れた声に少しドキリと心臓が跳ねる。
いつもと違う声にドキドキした。
お泊まりした時は、だいたい杏寿郎が先に起きちゃってて寝顔とかほとんど見たことない。だから余計にこの掠れた声が新鮮だった。
「あ、ごめんね!起こしちゃった…」
『いや、大丈夫だ。俺の方こそ、すまない…と、突然、電話を…切ってしまってっ』
段々といつもの声に戻っていく。だけど、どこか慌てているような気がするけど…
「ね、杏寿郎何かあったの?なんか…」
『き、気のせいだろうっ、いつも通りだっ!!それより、みんなと楽しめたか?』
話を反らされたことに若干違和感を感じたけど、それよりも杏寿郎の声を聞けて嬉しい、と思う気持ちの方が強かった。