第7章 疼き *
~夢主side~
返信が遅くなった為、直接電話で話そうと、集まった皆から隠れるように廊下に出ていた。
もちろん、声が聞きたかったのが一番だけど、それは恥ずかしいから黙っておく。
途中で通話を切られてしまったスマホを片手ににらめっこ。
なんで急に切られたのか?
少し切羽詰まったように感じだけど、本当に具合が悪いんじゃ…
「ねーちゃんっ!早く続きやろーよ!みんな待ってる」
杏寿郎のことが気になり、もう一度かけ直そうかどうしようかと悩んでいると、弟の郁茉(いくま)[16歳]が呼び戻しに来る。
「あ、うん。ごめんごめん!」
「…誰?…もしかして、男…?」
不機嫌そうに眉間に皺を寄せて私のスマホを指差す。
「えっ…?と、友達っ?」
咄嗟に友達と言ってしまった。ここはきちんと彼氏と言った方がよかったかな?
いや郁茉の前でそんなことを言ったら絶対に機嫌を損ねるはず。何て言ったって郁茉はかなりのシスコンだ。やきもちを焼かないはずがない。
「…オレが聞いてんのに、なんでねーちゃんが質問してくるの?…ホントに、友達…?」
更に疑りながら、こちらを見てくる。
これ以上は誤魔化せない…かも
もう白状してしまおうか、と思った時。
「陽奈子、郁。みんな待ってるぞ?」
優しい眼差しで微笑みながら、部屋から顔を覗かせて"おいでおいで"と手招きしていた。
お兄ちゃんの燈志(とうじ)[23歳]。
この状況を理解したようで、助けてくれた。
さすが私のお兄ちゃんだ。
「あ、はーい!今行きます。行こ、郁茉」
「え…うん…。」
少し不服そうな顔の郁茉の背中を押して、みんなのところへ戻る。
きっとお兄ちゃんは私に恋人が出来たこと、気付いてると思う。お兄ちゃんは昔から勘がいいから。