第7章 疼き *
「うん!すっごく美味しいよ!お母さん、お料理も上手だけど、お菓子作るのも上手いんだよ?」
「陽奈子はお母さんに似たんだな。君が作るご飯はとてもうまいし、前に作ってくれたフレンチトーストもうまかった」
そう言って片手で肩を抱き寄せれば、簡単に俺の胸のなかにぽすっと身体を預けてくる。
「ふふっ、また作るね?そうだなー、今度は新店舗メニューの試作品作るからそれを食べて貰おうかなー?」
とても楽しそうに話す陽奈子の声が心地いい。
俺は陽奈子の頭に自分の頭を乗せた。
「杏寿郎?」
その重みに気付いた陽奈子が顔を上げて、目を丸くして覗き込んでくる。
「っ、陽奈子…」
あまりに不意打ちすぎるその愛らしい表情は、俺の欲望をまた掻き立てる。
そのまま膝裏に手をいれて横抱きにし、ベッドに連れ去ると「杏寿郎…」と、少し遠慮がちに俺の名前を呼んでくる。頬を紅く染めながら両腕を広げて俺の首に腕を回す陽奈子はどこか色気を感じた。
「陽奈子…この間もしたばかりだが…、俺は君が欲しい。欲しくて堪らない…」
己の欲望に打ち勝つことはできない。愛しい人が腕のなかにいてしまえば…
「…ん。明日から会えなくなっちゃうし…私も、…杏寿郎と……し…たいっ」
頬を紅く染めながら、少し伏し目がちに陽奈子がそう言えば、身体がかっと熱くなる。
陽奈子から初めて"したい"と言われ、その言葉にでさえ下腹部が反応してしまっていた。
俺はもう陽奈子の色に染まっている気がする…
「陽奈子!!そういって貰える日が来るとは…もう優しく出来ないかもしれない、君があまりに煽るからっ…」
会えなくなると言ってもたった4日だ。
されど、俺達にとってはその数日でさえ長く感じてしまいそうだった。
その日数を埋めるように、重なり合い甘い時間を過ごした。