第6章 結び *
~煉獄side~
仕事が終わった俺は、最寄り駅でスマホを見る。
陽奈子からメールが入っているのを確認するためだ。
恋人同士になってからは毎日のように会っているにも関わらず、メールでやりとりもしていた。
『今日もお店にいるよ!』
その短い文につい頬が緩んでしまう。これから陽奈子に会えると思うと足取りも軽くなる。今にもスキップをしてしまいそうだ。
いや、いい大人が…や、やめておこう。
少し自分を落ち着かせながら、愛しい人がいる場所へ足を進めた。
カラン、カラン
店に付いてドアを開けるとテーブルに座って頭を抱えている陽奈子がいた。
「陽奈子っ!どうした!?頭が痛いのか?!」
咄嗟に駆け寄ると「なにが?」と首を傾げて不思議そうに俺を見つめる。
「え?別に頭は痛くないよ?もう、心配性だな杏寿郎は。でも、ありがと。」
どうやら具合が悪いわけではなさそうだ。それを聞いて安心すると、陽奈子が持っていた紙に視線を移す。覗いてみると"夏休み"と書かれていた。
「夏休みを貰えることになったの…」
そう言いながら少し困ったような顔をする陽奈子。
「どうしてそんな顔をするのだ?嬉しいだろう、夏休みをもらえて」
すると陽奈子がまた眉間に皺を寄せ、眉を下げながら答える。
「うーん…嬉しい、よ?嬉しいんだけどさ…どう過ごすべきかなって…」
それを聞いてなぜ陽奈子が悩んでいたか理解をした。きっと実家に帰るべきか、休みがなかなか会わない俺と過ごすべきかで迷っているのだと。だが、俺のなかでその結論はすぐに出た。
「陽奈子。君はきっと俺と過ごすか迷っているのだろう?」
そう聞けば「なんでわかったの?」と少し驚いた顔をする。顔に出やすい陽奈子だからすぐにわかる。
「だが、今回は実家に帰るべきではないのか?」
「え…でも…折角のお休みだし…杏寿郎とも一緒にいたい」
あぁ、そんな可愛い顔で言われてしまっては、結論が揺らいでしまう。なんて愛らしいのだろう…
その気持ちを抑えるように陽奈子を抱き締めた。