第6章 結び *
次の日
少し重い腰を擦り、お店の準備をしているとしのぶちゃんに「はい、これ」と紙を渡された。
見ると、名前と何やら日付が書いてある。「これは一体…?」と不思議そうに考えているとまたしのぶちゃんが口を開く。
「陽奈子さん、これは皆さんの夏休みの期間が書いてあります。」
「なつ、やす…み?」
突然の発言に少し驚く。だって、接客業にはそういったお休みなんて無縁だと思っていたから…でも、素直に嬉しい。
「短いですが、皆さん交代で3日間お休みを取っていただきます。ですが、陽奈子さんは特別1日お休みを増やして4日間にしました」
「えっ!?いや、ダメだよ!私ばっかりそんなっ」
特別扱いなんてされる義理はない。つい、声が大きくなってしまう。
「オーナーからも許可を頂いてます。暫くご実家には帰られてないでしょう?それに、私達も実家に帰りますが、いつでも行ける距離ですので。陽奈子さんのご実家は少し遠いでしょう?」
「うんうんっ!普段から頑張っているんだもの!たまには実家に帰って、羽を伸ばすのもいいわよ!家族の皆と楽しんでね♡」
周りを見ると、オーナーもアオイちゃんもカナヲちゃんも微笑み頷く。みんなが気遣ってくれたとすぐに理解した。本当に私は恵まれている、感謝してもしきれない。
「あ、ありがとうございますっ!お土産!いっぱい買ってきますから!!」
そう言うと皆が「楽しみにしてる」と笑顔で答えてくれた。
夕方、お店でノートを開いたまま朝もらった"夏休み表"に目を通す。
本当に私だけ4日もある…どうしようか。
実家に帰りたい気持ちはもちろんある。
だけど、こんなにまとまったお休みがあるんだから、杏寿郎と過ごしたい気持ちもある。
どっちを取るべきか頭を抱えて悩ませていると店のドアベルがなり、愛しい人が姿を現す。