第6章 結び *
あれから2週間。
杏寿郎とはほぼ毎日会っていた。私がフラムで練習をしたり新メニューを考えていると、そこに毎日のように差し入れを持って会いに来てくれる。それがすごく嬉しくて、幸せで…本当に大好きだと改めて思えた。
今日も杏寿郎は私の前に腰掛けながら読書をして、私に付き添ってくれる。たまに視線を送るとすぐに気付き「どうした?」と優しい眼差しをして微笑んでくれる。
「ううん…別にっ…なんでもないよ!」
大好きと、素直に伝えるのが恥ずかしいから、誤魔化すようにそう言って"新メニューアイディア"と書かれたノートに視線を戻しまたペンを走らせる。
すると、いつの間にか杏寿郎が私の後ろに立っていた。
「陽奈子…」
後ろから優しい声で名を呼ばれ抱き締められると、全身が痺れるように動けなくなってしまう。
「杏寿郎…」
「教えてくれ。何か思ったから俺に視線を送ったのだろう?」
私の肩に顎を乗せながら、そう呟くと"話すまで逃がさない"と言うように抱き締めていた両腕に力が入る。
「…っ、きょうじゅろっ…恥ずかしいから言わないっ!」
「では、こうしよう…」
両腕の力が緩んだと思ったら、両脇に手を入れられ立たされる。そして杏寿郎の方へと身体を反転させられると、優しく大きな手が私の頬に当てられる
「話してくれるまで、キスを止めない…」
そう言って食むようなキスが降ってきた。
「ちょ、…ん、まっ…はっ…んんっ」
杏寿郎の胸を押し返せば「話す気になったか?」と得意気に私を見下ろしてくる。
「まだもう少ししていたかったが…」
「も、もうっ!ここはお店なんだから、ダメだよっ」
こんな所でいちゃいちゃしていたら、誰かに見られてしまうかもしれないし、お店はそういうことをする場所じゃない。
「では、ここじゃなければいいんだな?」