第5章 心通う
~夢主side~
「もう少し離れて貰えるだろうか?」
そう言われ、何か気に触ることをしただろうか?と、考える。
「ごめん、嫌だった?一緒にいると、くっつきたくなっちゃって…」
そう言うと杏寿郎が、がばっと起き上がる。
「嫌ではない!!むしろ、嬉しい!!…あ、いや…すまない…そのやっぱり俺も男だ。あまりくっつかれると理性が持たない…陽奈子にもっと触れたいと思ってしまうのだ。だが、俺は君がいいと言うまで待つつもりだ!」
本当にこの人は優しい。
でも、このまま待たせてしまってもいいのだろうか?
それに、杏寿郎は結婚なんて考えているのだろうか?
まだ付き合って日にちは浅い。
そんなこと考えられるものだろうか…
でも、こんなにも私を大切にしてくれる人はそういないだろう。
それに杏寿郎となら、あのおじいさん、おばあさんのような夫婦でいられる気がする。
そう思うと、もう私の意思は完全に崩れていた。
「いいよ」
「む、そうか!いい…!?よ、よもっ!?だが陽奈子の意思は…!」
杏寿郎が驚いて大きな声を出す。
「杏寿郎ならっ…私をお、お嫁さんにしてくれる、でしょ…?」
自分で言ったことだけど、かなり恥ずかしい。
「それに、杏寿郎となら…私の理想の夫婦、家族になれると思う…だから…」
ぎゅっ
言い終わる前に抱き締められていた。
「陽奈子ありがとう。そんなに俺とのことを思っていてくれたなんて、俺は本当に嬉しい。もちろん男としての責務を全うするつもりでいる」
優しいけど、どこか芯がある声音。
すごく温かみがある言葉に胸がきゅうっとなる。
「なんか、お互いプロポーズみたいになっちゃったね」
「そうだな!だが、それは時が来たときにきちんと伝えたい。それまで待っていてくれるか?」
「はい、お待ちしてます」
そう言いながら笑い合うと、自然と視線が絡み合い、口付けを交わす。