第5章 心通う
~夢主side~
杏寿郎がお仕事に出掛けてから、私は昨日のうちに洗濯をしておいた自分の服(仕事着)を取り込み着替える。
杏寿郎に借りた服は家に持って帰って洗濯を…
と思っていると、いいことを思い付いた。
昨日杏寿郎と話していたとおりに伊黒さんのところへ浴衣を出し終えると、そのまま自分の家には向かわず、あるところへ足を向ける。
「よし、これだけ買えばいいかな?」
私は、杏寿郎を驚かせようとある作戦を決行していた。
再び杏寿郎の家に行くと、買ってきた荷物を広げる。
今日はオフだし、何も予定がなかったから、杏寿郎が帰ってくるまでここで待っていようと考えた。それに、少しでも一緒にいたかった。
朝ごはんを作っていたときに、「料理が苦手」と言っていた杏寿郎を思い出す。
確かに、キッチンはあまり使われているような形跡がない気がした。
なので、作り置きでもしておこうと今回のサプライズを決行したのだ。
「よし!とりあえず、煮込んでおこう…あとは…」
ある程度作って、あとは煮込んで終わり。
と、ついでにお掃除もしてしまおうと、掃除も始める。
「(なんか、私主婦みたい…でも、杏寿郎と結婚したらこんな感じなのかな…?)」
なんて少し浮かれながら掃除を終える。
夕方になり、いつ杏寿郎が帰ってくるかそわそわして待つ。
がちゃっ
鍵が空く音が聞こえると、パタパタと出迎えに行く。
「杏寿郎!おかえりなさい」
「よもや…陽奈子、まだ帰っていなかったのか!?」
朝見送った姿より、少し汗や作業着が汚れた状態で帰ってきた杏寿郎が目を見開いて驚いている。
「杏寿郎のこと待ってたかったから…、それに…一緒にいたかった、から…ダメだったかな?」
がばっ
気付くと杏寿郎に抱き締められていた。
「君という人は…あまり可愛いことを言わないでくれ。嬉しくてどうにかなってしまいそうだ…」
「杏寿郎…」