第5章 心通う
~煉獄side~
陽奈子とお互いの気持ちが通じあったあと、花火を最後まで見てから帰ることになった。
陽奈子の下駄が壊れているので、陽奈子をおぶって歩く。
「重く、ない…?」
気にするように聞いてくる陽奈子。
「そんなことはない、軽過ぎるくらいだ」
「…ごめんね、ありがとう…」
ぎゅっと俺の背中にしがみつく陽奈子。
その行動さえも愛しく思える。
しばらく歩いていると、駅の方がなんだか騒がしい。
「どうしたのかな?」
陽奈子が俺の背中から覗き込む。
その時、近くにいた人達の話が聞こえた
「なんか電車停まってんだって」
その声に立ち止まる。
「陽奈子、タクシーを探そう。電車は動いていないようだから」
「うん。ありがと…」
タクシー乗り場へと行くと…
「うわぁ…すごい、ね…」
電車が停まったため、帰る術をなくした人達でごった返していた
「よもや…こんなに人が…これではいつまでかかるかわからんな。」
「ど、どうしよ…」
どうするか暫くその場に立ちすくしていると、俺はあることを思い付く。
「陽奈子、明日は休みだろう?」
出店を歩いているときに、そんな話をしていたのを思い出す。
「え?う、うんオフだけど…でも、杏寿郎はお仕事じゃ…」
「俺は大丈夫だ。…そのっ、陽奈子が…嫌じゃなければ……」
最後の一言がなかなか言えない。
いや、いくら想いが通じあったとしてもさすがにそれは…
と、自分の中で葛藤していると
「もう、なーにー?気になるんだけど!」
陽奈子に急かされ、心を決める。
「む…嫌じゃなければ、俺の…家に泊まらないか?」
直球過ぎただろうか…、返事がない…
「…陽奈子?…いや、すまない、その、変な意味ではないのだっ!そのっ…」
変な誤解をされないよう、言葉を探すがなかなかいい言葉が出てこない
陽奈子の顔色を伺おうと、少し首を後ろに向けると…
「見ないで!!!」
陽奈子の手で阻止される。
「よ、よもや…どうしたのだ!?」
「その、今顔…紅いからっ…」
その言葉にこっちまで紅くなってしまう
「…いいよ。」
短い返事で答える