第5章 心通う
「あぁ…こんなにも短い間で人を好きになるものなのだろうか…?」
そう幸せそうに呟くと
「好きになるのに時間なんて関係ないよ、きっと。」
「そうだな。自然と惹かれていくものだ…俺は今、すごく…幸せだ」
「私も杏寿郎と同じくらい幸せだよ?」
陽奈子が顔を上げ、にこりと笑いながら杏寿郎を見つめる。
「…っ!!その…笑顔は反則だ…陽奈子。」
頬を染め愛しい人の名を口ずさむ。
「何、杏寿郎?」
「…き、キスを……してもいいだろう…かっ!?」
突然言われて驚いた陽奈子だったが、すぐに微笑み頬を染めながら
「うん…」
と、答えた。
どちらからでもなく顔が自然と近くなり
唇と唇がそっと触れ合った。
すると、それと同時に花火が上がる。
「…っ!!」
「…よもっ!!」
二人は驚いて顔を離してしまった。
「び、びっくり…したね?」
「う、うむ。このタイミングとは…だが、ここで陽奈子と花火が見たかったからちょうどいい!」
「花火も上がるんだ?すごく、綺麗だね…あ!」
綺麗で思い出した陽奈子が杏寿郎に申し訳なさそうに話す。
「あの、杏寿郎……さっき買って貰った簪…なんだけど…」
そう言うと杏寿郎は簪を目の前に差し出す。
「え!?どうして?」
「陽奈子のことを探している時に落ちているのを見つけた…」
申し訳なさそうに「ごめんなさい」という顔をしている陽奈子に杏寿郎が突然の問題をだす。
「陽奈子、知っているか?男が女性に簪を贈る意味を…」
「…え?」
なぜ贈るのか、その理由がわからずいると
「昔の話だが、男が女性に簪を贈る理由は、その女性が特別だからだ。大切に想い、愛しているという意味を込めて贈ったそうだ。だから、俺も陽奈子に簪を贈ろうと思ったのだ。」
そう言われると陽奈子は目頭が熱くなるのを感じた。
「…っ、あの時、そんな想いでプレゼントしてくれてたんだ…ありがとうっ…すごく嬉しい……」
そう言って瞳を潤ませながら杏寿郎を見つめる。
すると、またどちらからでもなく顔が近づいていき、
自然と唇同士が触れ合った。
少し離れるとお互いの額をくっつけながら
「大切にする。これからよろしく頼む」
「私こそ、よろしくお願いします」