第5章 心通う
~三人称~
陽奈子を抱えた杏寿郎は、しばらく無言で歩く。
すると、ある階段のところで立ち止まる。
「すまない、陽奈子…一人にしてしまって。」
そう言いながらその階段をゆっくりと登る。
「…ううん。はぐれちゃったのは私だし…」
「いや、側にいるべきだった。守ってやれなくてすまない。」
「そんなに謝らないで?私は大丈夫だよ。ほら、義勇さんが居てくれたし!」
そう言うと杏寿郎が眉間にシワを寄せ黙ってしまった。
気付くと階段は終わっていて、少し開けた丘があり、そこには小さな社があった。
その近くにベンチが一つ。
杏寿郎はそこに陽奈子を下ろす。
「…ありがと。」
俯きながら杏寿郎にここまで連れてきてもらった礼を言う。
すると、杏寿郎は陽奈子の怪我をした足にそっと触れながら、話し出した。
「痛いか…?」
「全然だよ。義勇さんが大袈裟なことするか…」
そう陽奈子が言い終わる前に、視界が暗くなる。
気付くと杏寿郎に抱き締められていた。
「っ!!…きょ…じゅろ…?」
「俺は君が好きだ。」
突然のことで頭が真っ白になる陽奈子。
「だが…陽奈子の気持ちが俺に向いていなくても、俺は君を想っていてもいいだろうか?例え君が、不死川が好きでも、冨岡が好きでも俺は陽奈子を好きでいたい。」
急な告白に戸惑った陽奈子だが、頭には疑問が…
「…ちょ、ちょ、ちょっと!ちょっと待って!!」
「む?なんだ?」
「え、なんで?!私がいつ不死川さんが好きって言ったの!?義勇さんだって、私はお兄ちゃんみたいな存在としか思ってないよ?!」
勝手に勘違いされていたので、誤解を解く。
「よ、よもやっ?!だが、不死川とデートしていたではないか!?」
「…え!?見てたの!?あ、あれは不死川さんがお礼って連れていってくれただけだよ?」
「む!?では冨岡はどうなのだ!?」
「だからお兄ちゃんとしか思ってないよ!私が好きなのは…」
そこで止まってしまう。
「杏寿郎は…本当に好きの意味がわかってる…?」
そう聞いてみる。