第5章 心通う
~煉獄side~
陽奈子とはぐれてしまった俺はあちこち探して回る。
電話をかけても繋がらない。
履きなれない下駄のせいで、走りづらい…
「(くそっ、どこにいるんだ陽奈子!!)」
下駄を脱いで走ろうと、脱いだ下駄を拾おうとしたとき、陽奈子に渡したはずの簪が落ちているのを見つけた。
「これは…陽奈子に渡した、簪…どこにいる陽奈子…」
俺はその簪をぎゅっと握りしめてまた走り出す。
しばらくすると、陽奈子の後ろ姿を見つける。
誰かにおぶられていた。
「陽奈子っ!!!」
叫び名前を呼ぶと振り返る。
「冨岡…」
陽奈子をおぶっていたのは、冨岡だった。
振り返った冨岡は、怒りの眼差しを俺に向けていた。
まるで「今更なんのつもりだ?」と言わんばかりに…
「(よもや…そうか、そうだったんだな冨岡。)」
『陽奈子を想っているのはお前だけだと思うなよ』
あの時言われた台詞を思い出し、冨岡は陽奈子に想いを寄せているのだと理解した。
だか、俺は引くつもりは毛頭にない。
初めてこんな気持ちを知ったのだ。
こんなにも陽奈子が大切で仕方がない。
「!!杏寿郎…っ、」
俺の名前を呼ぶ陽奈子は、少し悲しげだった。
すると急に冨岡がため息をはいて、陽奈子を下ろす。
「わっ!ぎ、義勇さん?!」
「あとは、自分でなんとかしろ。煉獄、隙があったら奪うからな」
そう言うと、歩いて行ってしまった。
「…あ、あの、杏寿郎…ごめんね?はぐれちゃって……」
陽奈子が謝ってくる。
が、謝るのは俺の方だ。
こんなにも大切な人の側にすら、いられなかったなんて…
怪我までさせてしまった
そう思うと自身に腹が立ってくる。
何も出来ない歯がゆさなのか、鈍すぎる自身になのか…
俺は陽奈子を横抱きに抱える。
「ぅっわ!!ちょ、杏寿郎!?やだ、降ろしてっ、はずかし…」
「すまないが。少し黙っていてくれるか」
少し強めに言うと、陽奈子が驚いた表情をして黙る。