第9章 ヒステリックナイト【納棺師】
____残り10分。
ぞろぞろと自室に戻っていく皆。
私は荘園の外に出て、その時を待っていた。
『今日はやけに月が綺麗、それに満月だ…』
月明かりだけが頼りのこの暗い庭に佇んでいる彼女の瞳はゆらゆらと揺れていた。
こんな無垢な女性が今から誰にも気付かれずに、人を暗殺するなんて誰もが分かるはずないだろう。
そう言いきれるのは、彼女は荘園では誰にでも平等に話しかけ、対応をするからだ。
そんな彼女は荘園からは信頼を得ている。
尚更、暗殺とは遠い言葉だと思われているだろう。
____残り5分。
彼女は再び荘園の中に入った、
あたりは静かさと暗さが目立つ。
みんな深い眠りについたようだ。
この睡眠薬は明日の朝まで一切目を覚ますことなく、気持ちよく眠れるだろう。