第8章 月下美人【配達員】
中々逃げようとしない彼にイラついてきて、つい言ってしまった。
『早くッ……私がαの私になる前に逃げてよッ!』
ビクターはビクッとしながらも逃げようとしない。
むしろ腕を私の首元に伸ばしてきて、ぎゅっと抱きしめてきた。
『っっ!?!?!?』
甘ったるい匂いがさらに強くなり、頭が痛くなる。
ぷつんと理性の糸が切れる音が脳内に響き渡る。
『ッ……逃げなかったこと後悔しないでよね…』
耳元で囁いた私にビクターの顔がどんどん熱くなっていく。
ビクターの服をはだけさせ、手袋と帽子はポイッと投げ捨てた。
そのままビクターを後ろへグイッと押して、ベットに寝転ばせた。
ビクターが逃げないように彼の腕を固定する。
『はぁはぁ……もう理性がもたないからッ…酷くしても責任は取れないからっっ!!』
ビクターは相変わらず逃げる気もなく、発情した瞳を私に向けてくる。
それが興奮の材料になっている事を本人は知らないのだろうか?いや、知っててわざとしているのかもしれない。