第8章 月下美人【配達員】
生唾を飲み込んで私は勝手に部屋の中に入りだした。
もちろん、他のαに取られまいと部屋の鍵を閉めて。
中に入ってきた私に戸惑いながら焦り出すビクター君。
『…ッ…ねぇ、その匂い…発情期?』
ビ「ッ………」
必死に首を振って否定している様だった。
『………私…αなんだよ。貴方Ωだよね?』
ビ「ッ!!…」
αと知った瞬間ビクターは本能的にジリジリと私から遠ざかる。
私は距離を詰める。
背中がベットに当たったビクターは焦っていた。
逃げられないようにベットの両脇に手を置いてビクターを挟む。
『ねぇ、私我慢出来ないの。今ならまだ逃げられる。早くそのワンちゃんを私に噛ませて逃げて。』
少しだけ残った理性で私は彼に逃げろと忠告した。