第8章 月下美人【配達員】
αを惑わせる匂いの元凶の元へ。
自室の扉を出ると、1層に匂いが強まり、私の胸の鼓動が早く鳴りだした。
『……ッ………欲しい…』
もう私の理性は歯止めが聞かない。
匂いが強くなる方へ向かった。
そこはとても近くて、隣の部屋から充満していた。
幸いにも別のαはこの匂いに気づくか気づけないギリギリの範囲に居た。
私だけが隣だった為、私が呼び出されたようなものだ。
甘ったるい匂いが私を狂わせる。
『早く早く早く……!!』
必死に抑えようとしても無理だ。
ドアノブに手をかけて捻った。
ビクター君は危機感を知らないのか?
すんなりと扉が開いてしまった。
中で初めて発情期を迎えるのか?と思わせるほど困惑して涙目のビクターか座り込んでいた。