第8章 月下美人【配達員】
この世界で女性のαなんて珍しい。
私はこのエウリュディケ荘園に来てからというもの、αである事を隠した。
わざと間違えたり、わざと攻撃を食らったり、わざと足を遅くして走ってみたりと色々誤魔化してきた。
女性のαと結ばれるのはΩだけ。
その事実を受け止めたくは無かった。
しかし、同族であるαには分かるのかもしれない。
裕福な生活をしてきたであろう男_囚人のルカ・バルサーは天才だった。
その天才力から私はαであると予想はしていた。
もちろんその予想は当たっていたようだった。
だが、私は彼と関わることも無く、ただ……部屋に篭ってばかりだった。
そんな日々を過ごしていたある日の事だ。