第3章 2
人を殺したであろう人物が目の前にいる。
警察に言った方が良いに決まってる
だけど体も頭も自分の思ってるように動かなくて、難しいことはなにも考えられない。
私は、落としていた傘を拾って何を思ったのか
「か、傘いる?」
なんて言ってしまった。
少し待ってみたが答えは返ってこなかった。
すでに雨に濡れてびしょびしょで傘の意味も無いから良いやと思い、傘を畳んでそーっと置いた。
そして一目散に走って家に帰る。
今見たことは記憶から消してひとまず家に帰ることだけに集中した。
口封じのために追いかけられる。いや、殺される事まで想像していたが、そんなこともなく無事に家にたどり着いた。
今までで一番速く走った自信はあるが、あの路地裏から徒歩5分の道のりはとても、とても長く感じた。