第10章 8
殺し屋さんが泊まっていって数日が経った。あの日学校に行くと同時にお別れしてから何事もなく過ぎた。
平凡な日常が数日前の非日常を消し去っていた。
今日は部活だとか委員会だとかの集まりで帰りは一人。
雨が降りそうな雲だなとか思いながらテクテク歩いていく。
ぽつりぽつりと雨が降ってきた。
傘を開いて足を進める。
傘の柄を見てふと思いだした数日前の非日常。
もう二度と起こる事のない非日常が脳内を巡る。
また会いたいなぁ
なんて思ってしまう。
だめだあの人は犯罪者。
会いたいなんて思っちゃだめ
というか
なんで会いたいなんて思ってしまうのだろうか?
美味しすぎた朝食のせいだろうか?
正直料理は苦手だからたまに作って欲しいな……
なんて余計な考えを巡らせてるうちに家についてしまった。
雨はいつの間にか強くなっている。
晩御飯のことを考えながら朝出来ていない家事を進めていく
父さんがいない一人暮らしで大変なことといえばこの家事たちだ。
父さんがいれば分担していたことも一人でしなくてはいけない…
ガチャッ
ん?
鍵を閉めたはずの玄関から扉を開ける音がする。
おかしいぞ?
父さんはいないしというか鍵閉めてるし…
近くにあった箒を手に恐る恐る音の原因を探しに行く。
怖すぎる
泥棒とかだろうか?
音の原因を目視して目が飛び出しそうなほど驚く。
だって眼の前に“人殺しさん”がいてるんだから
????
頭の中がはてなで埋め尽くされている間にあっちから声がした。
「ごめん。泊まらせて!ごはん作るから!」
スーパーの袋を見せながら言ってくる
人殺しさんはもっと怖い人なのでは?とかこんなにフレンドリーな感じでいいのだろうかとか思うことはたくさんある。
けど『ごはん作るから』この一言で断る理由はなくなってしまった。
「ご飯作ってくれるならいいですよ!」
喜んで!まで付け加えそうになったがぐっと我慢した。
俺のことは気にしないでいいからとか言ってるから放っておく。
「キッチンとか適当に使ってくださいね」
とは言っておいた。
絶対に極悪人なのに謎に信頼してしまう。
流石に気をつけないと…
晩御飯につられてさされたりでもしたら…
困ったな