第6章 人生の核
「なんていうか……『これがないと生きていけない』とか『この人のおかげで変われた』みたいな『人生の核』を持ってる人って少ないと思うし……キミの言葉を借りるなら美しい、かな……?」
……驚いた。キミそういうこと言う人だったの?それとも私に感化された?
彼の言う『人生の核』が私にとってのユキだったんだろう。
そして彼は『人生の核』を持ち、自分を変えた人を美しいと言った。
「本当は彼女と深く関わるつもりはなかったんだけど……しかし結局人はみんな誰かと繋がっていたいものなんだね。誰かを愛したり、誰かを信じてみたり。でも、同時に誰かを愛する事、信じる事は、いつか裏切られる不安もつきまとうものだと知っておきながら」
「……なんかルーク氏がそれ言ってもあんま説得力ないよね……」
ぶん殴るぞ貴様。
「僕なんて核どころか……「不幸がうつる」「あれが呪われたシュラウド家の……」「全体的に青くてキモーい」とか言われて棒でつつかれたり……イヤーッ!!」
「お、落ち着いてイデアくん。そんなことを言う人は一体誰だい?」
「そんなのみんなに決まってるだろ!!みんな僕を見てヒソヒソ話をして笑うんだ!!幽霊みたいで気持ち悪いって!!」
誰だそんなふざけたことを抜かすバカタレは。イデアの被害妄想ならまだしも、本当にこういうこと言う奴いたら生き埋めにすっぞ。
はぁーと息を吐いてすっかり怯えて縮こまってしまったイデアの頭に手を乗せる。
「ルーク氏……?」
イデアがおずおずと顔を上げる。
叱られる前の犬みたいに怖がってるけど、私はキミを叱りたいわけじゃないんだよ。
「私は話を聞いてもらえてすごく嬉しかったよ。馬鹿にしないでちゃんと聞いてくれて、とても嬉しかった」
「……真剣な顔されて語られたんじゃ追い出す訳にもいかないでしょ」
「そんな優しさもキミのいいところだね!でも周りの目が気になるのは、自分のことばかり考えているからさ。もっと周りを見てごらん。美しい物や人で溢れかえっている。世界は美しいんだよイデアくん」
「……世界は、美しい……」